2019年1月26日、大坂なおみ選手がまた1つ日本テニス界の歴史を塗り替えました。全豪オープン決勝で、ウィンブルドンを2回制したチェコのペトラ・クビトバ選手を破り日本人初の優勝。そして世界ランク1位確定という快挙!! 昨年9月、日本人初となるグランドスラムの1つ「全米オープン」優勝から連続でのグランドスラム制覇となりました。
大坂なおみ選手 日本人初!! 全米オープンに続き全豪オープンシングルス優勝!!
大坂選手の全豪オープン全試合結果
Words can’t describe this feeling. pic.twitter.com/MUMtR5stV1
— NaomiOsaka大坂なおみ (@Naomi_Osaka_) 2019年1月26日
1月15日(火)1回戦
【WIN】大坂なおみ 2-0 M.リネッテ(ポーランド)
選手名 | 1 | 2 | 3 | 合計 |
大坂なおみ | 6 | 6 | 2 | |
M・リネッテ | 4 | 2 | 0 |
1月17日(木)2回戦
【WIN】大坂なおみ 2-0 T.ジダンセク(スロベニア)
選手名 | 1 | 2 | 3 | 合計 |
大坂なおみ | 6 | 6 | 2 | |
T・ジダンセク | 2 | 4 | 0 |
1月19日(土)3回戦
【WIN】大坂なおみ 2-1 謝淑薇(台湾)
選手名 | 1 | 2 | 3 | 合計 |
大坂なおみ | 5 | 6 | 6 | 2 |
謝淑薇(シェ・シュウェイ) | 7 | 4 | 1 | 1 |
1月21日(月)4回戦
【WIN】大坂なおみ 2-1 A.セバストワ(ラトビア)
選手名 | 1 | 2 | 3 | 合計 |
大坂なおみ | 4 | 6 | 6 | 2 |
A・セバストワ | 6 | 3 | 4 | 1 |
1月23日(水)準々決勝
【WIN】大坂なおみ 2-0 E.スビトリナ(ウクライナ)
選手名 | 1 | 2 | 3 | 合計 |
大坂なおみ | 6 | 6 | 2 | |
E・スビトリナ | 4 | 0 | 0 |
1月24日(木)準決勝
【WIN】大坂なおみ 2-1 K.プリスコバ(チェコ)
選手名 | 1 | 2 | 3 | 合計 |
大坂なおみ | 6 | 4 | 6 | 2 |
K・プリスコバ | 2 | 6 | 4 | 1 |
1月26日(土)決勝
【WINNER】大坂なおみ 2-1 P.クビトバ(チェコ)
選手名 | 1 | 2 | 3 | 合計 |
大坂なおみ | 7(7) | 5 | 6 | 2 |
P・クビトバ | 6(2) | 7 | 4 | 1 |
こうやって見てみると、決して楽に勝ち上がってきたわけではありません。7戦してストレート勝ちは3回。他の4戦は2-1と1セット失っています。全豪オープンが行われたメルボルンですが、とにかく気温がハンパなく高い!! ここ数年、温暖化の影響か分かりませんが、夏はかなり暑いんですよね。。。
準決勝当日のメルボルンは午前中に40℃を超えました。そして最高気温は44℃の予報。ただでさえ強烈な日差しの上に、熱せられた風が強めに吹いて体感温度をさらに上げていました。そんな中、大会運営側も状況を考慮し、大坂選手の試合は屋内コートでの試合を決定したほどです。
ルールエクストリーム・ヒート・ポリシー(酷暑対策ルール)
近年酷暑の中で試合をする事により、体調を崩す選手が多発しました。その為、「ルールエクストリーム・ヒート・ポリシー(酷暑対策ルール)」というものが作られました。これは温度、放射熱、湿度、風速に基づき数値化される「ヒート・ストレス・スケール」で判断され、それぞれ措置が決まっています。その措置ですが、具体的に言うと以下のようになります。
- 問題なくプレーできる環境
- 水分摂取の推奨
- 冷却対策(アイスタオルなど)の適用
- 休息時間の延長(女子シングルスは第2セット終了後に15分の休憩など)
- プレーの中断
昔は暑い中でも「根性だ!!」と言われ、水も飲まず休憩もせずに練習したり試合をしたりするのが普通でした。しかし今は科学的な分析などから、そういった‘‘根性論’’ではどうしようもないという風潮になりました。これは非常に良いことだと思います。無理をする事によって選手たちの選手寿命を縮めてしまいますからね。
今回の大坂選手の準決勝でもこのルールが取り入れられ、室内コートでの試合となりました。本人は外でのプレーが好きらしく、ガッガリしたと言ってましたけどね(;^ω^)
大坂選手の進化したポイント ~体幹~
全米オープンから約4ヶ月で迎えた全豪オープンでしたが、明らかに変わった点が見られました。一目で分かったのは、その体型です。全米オープンの時と比べても明らかに絞れていました。そもそも私が初めて大坂選手を見たのが2年前位です。この時、サーブの速さやパワフルなストロークを見て、ウィリアムズ姉妹のような印象を受けました。5年も経てばきっとグランドスラムで勝ってくれるだろうと。
ところが私の予想など呆気なく裏切り、あっという間に昨年グランドスラムの1つ、全米オープンを制覇。この時の体型はやはりウィリアムズ姉妹を思わせる感じでした。ウィリアムズ姉妹に比べると細いので、このままパワーアップしていけばもっと大きくなるのではないかと思っていました。しかし今回全豪オープンでの大坂選手は細くなっていました。これは単純に痩せただけではなく、体幹を鍛えた結果でしょう。
その成果が顕著に出ていたのが「フットワークの良さ」です。相手に左右に振られても素早く追いつけるようになったので、態勢を整えることが可能となりパワフルなリターンを返すことができていました。身体が軽くなった事によってスピードが上がり、体幹を鍛えているので態勢をすぐに立て直すことができるのです。左右のフットワークだけではありません。ドロップショットに対しても素早く反応し、見事にポイントにつなげていました。これが大きな進化だと思いました。
大坂選手の進化したポイント ~精神面~
大坂選手の弱点と言えば「精神面」でした。特に昔の試合を観ていると、ミスが出るとイライラが止まらずそこから一気に崩れていくシーンが何度もありました。観ている側からすればまだまだ圧倒的に有利な立場なので「そんなに気にしなくてもいいのに」と思うのですが、どうしても引きずってしまうようでした。
ところがセルビア系ドイツ人のサーシャ・バイン(本名はアレクサンダー・バイン)コーチとの出会いによって精神面も急成長を遂げます。サーシャコーチは選手としては大成せずに早い段階でコーチの道に進みました。そしてそれは正解でした。コーチとしての才能は非凡な物だったのです。サーシャコーチはとにかく明るく、相手のことを思いやってくれるそうです。あのセリーナ・ウィリアムズ(米国)選手のヒッティングパートナーを長年務めており、セリーナ選手があれだけ長年活躍出来ているのもサーシャコーチのおかげとも言われています。セリーナ選手もサーシャコーチのことを「家族」と言うほど信頼を置いています。
そんなサーシャコーチの指導法ですが、2つの大きな特徴があります。
- メンタルを重要視
- 対戦相手の特徴を踏まえた効果的な指導
まず1番目ですが、「どうすれば自分で自分をコントロールできるか?」ということに重きを置いています。その為にはポジティブな思考が重要です
サーシャコーチが大坂選手のコーチに就任して以来、試合の中で大坂選手がミスでイライラしている時、サーシャコーチが大坂選手の元へ行くシーンが何度もありました。その際、サーシャコーチは決して声を荒げることはありません。ちゃんと大坂選手の話を聞いて、そしていつもポジティブな言葉で大坂選手に語りかけています。「大丈夫、君ならできる」といったポジティブでシンプルな言葉。これを繰り返すうちに大坂選手も気持ちの切り替えが徐々に出来るようになっています。それが今回の大会で顕著に表れたのが以下のシーンです。
.@Naomi_Osaka_‘s response to this fan is classic Naomi Osaka ?#AusOpen pic.twitter.com/Tn7Mnex7wh
— #AusOpen (@AustralianOpen) 2019年1月19日
以前だったらイライラしていただろう場面ですが、今回は会場を笑わせるほどの返しをしています。こんなリラックスした精神状態を保てるようになったからこそ、今回の全豪オープンで優勝できた秘訣だと思います。
そして2番目ですが、サーシャコーチは対戦相手のパターンを分析し、その対策を徹底的に行います。例えばプリスコバ選手(チェコ)と以前戦った際は、相手のフラットな速い球筋に対し、カウンターを狙う練習を徹底的に行っていました。今回も各対戦相手の特徴を研究し、徹底的に対策をしていたでしょう。
こうしてサーシャコーチのおかげで大坂選手はメンタル面で大きく成長し、自滅する場面がかなり減りました。そして相手の弱点を攻めることができました。自滅さえなければかなりの確率で勝てる力を持っている大坂選手。今回それを見事証明して見せました。
獲得賞金 ※2019年1月中旬時点の金額が基準となっています
下世話な話ですが、今大会の獲得賞金が気になる方もいるでしょう。全豪オープンの優勝者の賞金は、410万豪ドル(2,950,00USドル)です。日本円にすると約3億2000万円!! 凄いですよね。ここまでの大坂選手の生涯獲得賞金は7,682,862ドルでした。これに今回の優勝賞金をプラスすると、10,632,862ドルになります。
日本人女子プロテニスプレーヤーの中で生涯獲得賞金が一番多いのは、杉山愛さんです。杉山さんの生涯獲得賞金は8,128,126ドルでしたので、大坂選手は杉山選手を抜き日本人TOPになりました。まだ21歳ですから、この先どこまでこの記録を伸ばすことが出来るか楽しみでもあります。
ちなみに世界の女子プロテニスプレーヤーの中で1位に君臨するのは、大坂選手が尊敬するセリーナ・ウィリアムズ選手です。その金額はなんと88,233,301ドルにもなります。今の大坂選手の約8倍ですね。このまま快進撃を続けて、この記録に追いついて欲しいですね(^_^)
ただこれはテニスでの賞金です。スポンサー契約などは含まれていません。大坂選手は人柄もよくスポンサーからも引っ張りだこでしょう。世界ランキング1位になった事により、大坂選手の広告業界での価値もさらに上がったでしょう☆彡
今大会の名言集
昨年は流行語大賞にもノミネートされた「なおみ節」ですが、今や毎回多くのマスメディアが大坂選手の発言に注目しています。今大会の「なおみ節」をまとめてみました。
※全豪オープン大会前の記者会見の時
※1回戦のVSマグダ・リネッテ(ポーランド)試合中、コートにいた虫をボールパーソンに払ってもらった時
※2回戦のVSタマラ・ジダンセク(スロベニア)の試合直前、錦織圭選手の試合時間が4時間弱にも及んだことを聞かれた際
※ジダンセク選手に憧れを感じたと言われた際
※4回戦のVSアナスタシア・セバストワ(ラトビア)で、「いたるところにカメラがあって見張られているようではないか」と聞かれた際の回答
※準々決勝のVSエリナ・スビトリナ(ウクライナ)戦のテレビインタビューで、この日74歳の誕生日を迎えた祖父の鉄夫さんに向けて一言をお願いされた際
※準決勝VSカロリーナ・プリスコバ(チェコ)戦。「大会を通じて精神的に成長しているか?」と問われた際
※準決勝VSカロリーナ・プリスコバ(チェコ)戦。マッチポイントでビデオ判定の結果を待っていた時の心境を聞かれた際
※準決勝VSカロリーナ・プリスコバ(チェコ)戦。気温40℃近い酷暑の中、屋内コートで試合が行われたことについて
まとめ
全米オープンに続いて全豪オープンも制した大坂選手。その強さはもう疑いはありません。そして28日に発表される世界ランキングでは1位に輝きます。女子テニスプレーヤーとして、日本人初の世界ランキング1位。今後は追う立場ではなく追われる立場になります。世界中のプレーヤーから研究され、色々と厳しい面も出てくるでしょう。
それでもウィリアムズ姉妹のように今後もグランドスラムを制し、女王として君臨して欲しいと思います。そして何より、今のようなみんなに愛される大坂選手のままでいて欲しいと思います。今後も大坂選手の活躍を見守っていきましょう♪
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